七月七日の陛下1

兵舎の執務室で暫し考え事をしていた。

考える事は、いつもあの方の事だが。

人の気配に顔を上げ、10歩殆ど前にある扉を見た。

ドアの外から声が聞こえる。

大護軍様

迂達赤の隊長チュンソクだった。

何だ?

陛下がお呼びです。

こんな夜更けに?

何用か?

ただ、直ぐに呼んで来るようにと。

何か重要な事なのか、大護軍が参った後は人払いをするようにと、命を受けております。

人払い?何だ?

俺は椅子から立ちあがりながら大きく息を吐いた。

迂達赤は陛下の側近。

昼も夜も陛下の側でお護りするのが役目。

だが、俺は夜のお勤めが一番嫌いだ。

執務室を出ると、チュンソクが待っていた。

何のお話しでしょう?

元との対話の話しでしょうか。国交を断絶する噂も出ております。

そう言うチュンソクを従えて兵舎を出た。

わからぬ。その様な話しであれば昼間でも構わぬであろう。こんな夜更けに呼び出すのだ。

余程の事であろう。

陛下の寝所の前には迂達赤と共に武閣女が護りに着いている。

叔母のチェ尚宮が俺の前に立ちはだかった。

俺は叔母上に聞いた。

陛下は何用か?

お前には分かっているはずだ。

この宵の頃に呼び出される意味を。

意味?

言っている意味が俺にはわからなかった。

わからぬ。何だ?

そう言った俺に叔母上は俺の胸倉を掴んで、

俺の顔を自分の顔に近づけた。

いいか

これから知り得る事は、お前が死ぬまで誰にも漏らしてはならぬ事。

これは名誉な事だから止めぬが。

相手が陛下である事は忘れてはならぬ。

そう言った叔母上は俺の腕を引き、寝所の前に立った。

チェヨンが参りました。

叔母上の声が響くと、中から陛下の声が聞こえた。

入れ。

叔母上が、今一度俺の腕を上げ掴んで俺の顔を睨んだ。

皆がこの場から離れる。

気を抜くな。

それは、声の届かぬ所まで皆が下がり待機する事。

俺は頷いてから部屋に入って行った。

扉が閉まると、俺はその場で片膝を立てて、床に跪いた。

チェヨン、参りました。

夜更けにすまない。

顔を上げて、近くに寄れ。

俺は顔を上げた。

幾つもの蝋燭が揺らめくなか、陛下は奥の寝台に居るのが陰で分かった。

寝台の四方が薄い布で覆われている。

そこから影が映ってみえていた。

寝台の近くに歩みを進み、また跪くと、

陛下が立ち上がるのが見えた。

俺は視線を落とす。

陛下が、寝台から降りて俺の前に立った。

そのまま視線を伏せていると、白い寝衣に、白くて小さな足が視界に入った。

だから、嫌なんだ。

夜の務めは。

嫌でも陛下の寝衣姿を目にし、そして陛下の寝息を聞き、安否を確認する為、寝顔さえも見なければならない。

俺は動揺しつつも静かに聞いた。

陛下、何の御用でしょうか?

もう直ぐ日付けがかわるが、明日は何の日か知っておるか?

七月七日は、陛下の御誕生日でございます。

そうだ。

故に、そなたから貰いたい物がり、呼び出した。

俺が陛下に贈れるものなどあるのだらうか?

たかが武官。

何も持っておらぬ。

某に?何でしょう。

俺は視線を下げたまま、聞いた。

立て。

立って顔を上げなさい。

俺は言われた通り、立って顔を上げた。

真っ白な寝衣を纏う陛下のは、長い髪も下ろしていた。

小さな顔に、紅をさしているかの様な赤い唇。

その身体から放たれる、陛下自身の香りに俺の胸の鼓動が一気に高まる。

俺より小さな体の陛下を見下ろす形になってしまう。

俺を見上げる陛下の真っ直ぐな瞳に思わず生唾を飲み込んでしまった。

何度この寝衣の姿を見て、息を飲んできたのだろうか。

抱きしめて、自分のものにしたいという衝動を幾晩押し殺してきたのだろうか。

相手はこの国の女帝。

決して、手の届かないお方なのに。

耐えられず、視線を外した俺の背に手を回しつ、陛下がふわりと俺の胸に抱きついてきた。

頭の思考が一度停止した。

頭が真っ白になった。

一瞬、息をするのも忘れてはしまった。

陛下に触れるとこなど出来ない。

ましてや押し退ける事など出来ない。

俺は両方の手を握り締め、

腕の中に居る陛下に声をかけた。

陛下、お放し下さい。

何のお戯れでしょうか。

こんな夜更けに人払いまでしている。

その意味くらい分かるであろう?

陛下は何を言っているのだろう。

俺にはその意味がわからなかった。

わかりませぬ。

兎に角、お放し下さい。

わからぬか?

この国の鬼神と恐れられる者も

女子には疎いのか?

陛下が潤んだ瞳で俺を見上げていた。

そなたが、欲しい。

もう直ぐ日付けが変わる。

この日だけ、そなたを妾のものにしたい。

陛下の細い腕が俺の首に絡まり、背伸びをした陛下の唇が俺の唇に触れた。

柔らかく温かな唇が。

陛下

ウンスだ。妾の名はウンス。

今、この時だけ、そなたにはその名を呼んで欲しい。

俺の頭は混乱していた。

密かに慕っていた陛下が俺に口付けをしている。

俺と床を共にしようとしている。

しかし、その様な恐れ多い事など。

命令だ。

陛下の命令は絶対だ。

背く事など出来ない。

陛下が俺の手を引きながら、寝台の上に上がった。

七月七日のこの日だけでいい。

妾をただの女子として見て欲しい。

身分など忘れて。

俺は。

どうしたら。

陛下に触れるなど大罪。

ましてや。

女子に恥をかかせるのか?

それとも、この様な事をする妾を蔑んでいるのか?

俺は寝台に押し倒された。

陛下が俺の上に身を置き、見下ろしている。

チェヨン

そなたが好きだ。

愛おしい。妾をそなたのものにして欲しい。

それが妾の望みだ。

俺の心の臓が止まるかと思った。

陛下がその様な事を考えているなど、微塵も感じた事がなかったから。

七夕の言い伝えを知っておるか?

書物で読んだ事があるのだが、離れ離れになった恋い慕う男女が、この日だけが会う事を許されるとか。

だから。今日だけでよい。今宵だけでよいから。

一緒に居て欲しい。

あの陛下が。

皆の前に立ち凛とする姿しか見た事がない陛下が頬を赤く染めていた。

そなたの想いはわからぬが、妾は慕っておるから。だから

もう、止められなかった。

今まで、我慢して抑えてきた物が、一気に弾けた。

俺は陛下を寝台に押し倒して、その小さな唇を貪っていた。

もう、処刑されてもいいとさえ思っていた。

思いを寄せていた陛下から、そんな言葉を頂くなんて。

冷静にならなくてはいけないのに止まらなかった。

陛下の寝衣の帯をするりと解いてしまう。

頬を赤く染めながらも、陛下は俺の目を見ていた。

黒曜石の様に黒く光る瞳が潤んでいて、更に妖しげな光を放っていた。

寝衣を脱がせつつ、首筋に肩に口付けをしていく。

陛下の肩が小さく震えていた。

初めて故、どうして良いか分からぬ。

今少し、優しく扱え。

陛下の言葉に俺は我に返り、後ずさってしまった。

俺は、何てことをしてしまったのだろうか。

女帝ウンスと大護軍の禁断の愛

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恐らく陛下はあの小さな王様と想像された方が殆どでしょうか(-;)

女帝ウンスも素敵かと

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